GOTH【ゴス】夜の章、僕の章(角川文庫)
作者:乙一
頁数:190.253
発売日:2005/6/25
≪内容紹介≫
本性を隠し、普通の高校生としてクラスにも溶け込んでいる少年「僕」。
それを見抜き、時々話すようになったクラスでは浮いている美少女「森野夜」。
殺人鬼や死体、異常なものに興味を持つ高校生が様々な事件に関わる物語。
計六編の短編集。
人間の残酷な面を覗きたがる者[GOTH]を描く、第三回本格ミステリ大賞受賞作。
『夜の章』
【暗黒系Goth】【犬Dog】【記憶Twins】
『僕の章』
【リストカット事件Wrist cut】【土Grave】【声Voice】
≪感想ネタバレ有≫
二冊で繋がるナイフの表紙、開くと現れる森の中で横たわる女性。
そんな雰囲気に惹かれ、読んでみることにした。
この本を読んだ当時は、叙述トリックの存在を知らず、
グロイ描写にもあまり耐性が無かった。
そのため自分にとっては衝撃的な作品となった。
小説ってスゲー。
素直にそう思った。
異常な人物が多数登場し、そんな殺し方する?と恐怖を覚える場面もある。
「僕」と「森野夜」に関しては、
同じ異常な趣味を持ってはいるが、根っこの部分は真逆と言って良い人物だと思う。
普通を装ってはいるが、本性は芯まで異常な「僕」。
異常な神経を持っているが、芯まで異常には入り込めない「森野夜」。
そんな二人。
『夜の章』
【暗黒系】
「森野夜」が連続殺人犯の日記と思われる手帳を拾う。
そこに記された、まだ発見されていない被害者を二人で探しに行く。
発見した被害者のファッションを「森野夜」がおもしろがって真似する。
それが原因で標的にされる。
「僕」が犯人を割り出し「森野夜」を救う。
「僕」は、やたらと頭が切れる。
反対に「森野夜」は自分を拉致した相手が連続殺人犯だとすら気付いていない。
そんなコントラストがおもしろい。
「僕」の推理は良くできていると思った。
なにより犯人を探した理由が「森野夜」の殺害された姿を見てみたいから、という部分に恐怖を覚えた。
【犬】
カギとなるのは語りは誰かということ。
「僕」がペット誘拐犯を探す。
「森野夜」は犬が苦手。
完全に騙された。
これが初めて出会った叙述トリックものだと思う。
ただ、『一緒に生まれた兄弟たちがいた』という台詞は不自然になるし、
無くても良かったのでは?
【記憶】
「森野夜」の心の闇、正体が明かされる。
彼女の正体には驚いた。
彼女の抱えていたものを考えると「森野夜」というキャラクターが愛しく思える。
『僕の章』
【リストカット事件】
連続手首切断事件が発生する。
「僕」が化学準備室で手首のない人形を見つけ、化学教師に疑いを持つ。
化学教師の家に侵入し、手首を発見、持ち去る。
「僕」の策略により、化学教師は「森野夜」を疑う。
化学教師が痴漢撃退スプレーで返り討ちに合い、痴漢で逮捕。
リストカット事件の犯人とは明かされないまま…。
手首切断事件も猟奇的だが、「森野夜」の手首が欲しいから疑いを向ける、
というのもかなり発想が飛んでいる。
手首を盗んだのが「僕」だとばれているのではないか、と思わせるのはうまいと思った。
【土】
男の子を棺桶に入れ、土に埋め、空気穴から水を入れ溺死させる。
数年後今度は女子高生を埋める。
埋められた女子高生は誰か。
そして、「僕」に追い詰められていく犯人の絶望。
【声】
殺す前に録音した声を遺族に聞かせる。
そしてその遺族も狙う。
犯人は誰なのか、それをトリックで上手くドキドキさせながら読まされた。
もしかしてついに殺ってしまったんじゃないかと疑った。
取り敢えずエグイ事件だ。
「僕」と「森野夜」の微妙な関係、距離感がいい感じ。
結局「僕」が1番深いところに居る。
≪まとめ≫
だらだらと長く書いてしまい、時間もかかり、その癖後になる程だれてしまった。
疲れた…。
この小説は、もっと小説を読みたいと思わせてくれた作品で、ここから読書が好きになった。
漫画や映画では出来ない小説ならではの手法、それに感動した。